アワビ(エゾアワビ)
アワビの中でもエゾアワビは、北海道・東北地方を中心に生息し、 茨城県が分布の南限です。岩礁域にすんでおり、海藻を餌とします。 天然の海では、ふ化から約5年で11cmになります。
生産の流れ
親貝養成
親貝は海藻のアラメを与えて飼育します。親貝は、放流貝の遺伝的なことも考え、毎年新しい天然貝を加えています。6月頃と10月頃の年2期、雌は卵を、雄は精子をもち、産卵・放精の準備が整います。 |
採卵
親貝の雌と雄を別々にして容器へ入れ、産卵・放精を誘発するための刺激として、紫外線殺菌した海水を流し込みます。 |
ふ化・幼生期・採苗(波板付着)
受精から約半日でふ化し、浮遊幼生(初期:トロコフォア幼生、中後期:ベリジャー幼生)になります。この時期は海水中を泳ぎ回り、数日すると付着場所を探すようになります。 このとき、珪藻【けいそう】の着いた波板を入れると幼生が付着し、変態します。これ以降から繊毛【せんもう】を捨てて付着幼生となり、付着生活に切り替わります。 |
波板飼育
付着幼生はしだいに稚貝の姿になり、波板上の珪藻を食べて急速に成長します。 食べられずに残った珪藻は日光を受けて再び増殖するので、「食べられる量」と「増える量」のバランスが保たれていれば餌不足になることはありません。 |
稚貝はく離
波板での飼育中に成長した稚貝が多くなると、餌の珪藻が不足するため、7~8mmの大きさになると波板からはがし、網イケスでの飼育に切り替えます。 |
網イケス飼育
網イケスにはシェルターとよばれる隠れ家を入れます。アワビは夜行性であり、昼間はシェルターの下に隠れ、夜になると餌を食べに姿を現します。 この時期の稚貝は、天然海ではコンブやアラメなどの海藻を食べますが、ここでは配合飼料を与えて育てます。配合飼料の栄養価は高いので稚貝が良く成長します。また、その成分の影響で貝殻が鮮やかな緑色で作られます。 |
選別
網イケスでの飼育中、生まれた日が同じであっても、大きい稚貝や小さい稚貝が現れてきます。 これは遺伝的な原因や飼育環境の悪化によるものですが、そのまま同じ網イケスの中で飼育すると大きい稚貝ばかりが餌を食べてしまい小さい稚貝が育ちにくくなってしまいます。 そこで大小の選別を行い、稚貝の大きさをそろえてから再び飼育します。 また、放流前にも選別を行い、放流方法や漁場に適した大きさで放流できるように稚貝をサイズ分けします。 |
放流
30mm以上になった稚貝は、漁業者によって県内の漁場に放流されます。 放流は、岩場の海藻が豊富な場所に、船上放流や潜水放流、放流器を用いた放流によって行われます。 特に潜水放流と放流器を用いた放流では、天敵に食べられることが少なくなり、生き残る確率が高くなります。 放流した稚貝は、その後成長しても網イケス飼育中の配合飼料で着いた貝殻の緑色が残るため、これを標識として利用しています。放流貝の漁獲回収率は約20%で、貝殻の色以外は見かけ・肉質とも天然のものと区別がつきません。 |